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「見るだけではない。読むことで広がる作品集の楽しみ。」
THE EARTH IS ONLY A LITTLE DUST UNDER OUR FEET by Bego Antón

日頃作品集を販売していて最も頻繁に尋ねられることの一つが、興味はあるがどのように見たらいいのか分からない、あるいは、何から見ればいいか分からないという質問だ。その場で好みを探りながら提案することもあるが、表紙や一枚の写真でもいいので、気になったものがあれば直感に従い手に取り、まずは一冊購入してみることを勧めるようにしている。そのような経験を重ねていくと、集まった本から自ずと自分の好みが分かるようになる。ではどのように見ればいいか分からないという疑問に関してはどうか。もちろん各々の作品にコンセプトや作家の思いはあるが、作品鑑賞は決して一つの正解を探すことが目的の謎解きではない。最終的には何かを理解しようとする過程や独自の解釈の先にこそ、その意義と楽しさがあると僕は思っている。

第一回目となる今回は、そのような自由な想像力を養ってくれる作品集を紹介したい。スペイン人写真家のビーゴ・アントン(Bego Antón)により制作された本書は、彼女がアイスランド各地に伝わる妖精や魔法に関する民話、不思議な体験談を探し求めて行なった旅で撮影した写真や物語を収録している。実物を手にとっていただければ分かるが、本書はテキストだけでなく、写真も含めて「読む」作品集である。摩訶不思議な写真やエピソードはブックデザインにも反映されており、まるで児童文学書のように凝った装丁や文字組み、空白のページや白いインクを使った文章など、読者の想像力を喚起する仕組みがいたるところに盛り込まれている。「見る」のではなく「読む」ということ。本書は作品集と読書という体験を繋ぎ、開く度に魔法にかけられるような、魅力に溢れた一冊だ。

(日日作品集#1 金澤9月号 No.200, October 2019)

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