BEYOND DRIFTING: IMPERFECTLY KNOWN ANIMALS by Mandy Barker

Spread of the book “BEYOND DRIFTING: IMPERFECTLY KNOWN ANIMALS”

本書は海洋環境問題をテーマに制作を行うイギリス人写真家、Mandy Barker(マンディー・バーカー)が、およそ200年前に出版されたJV Thompson(ジョン・ヴォーン・トンプソン)の著書を土台に制作した一冊である。

ジョン・ヴォーン・トンプソン(1779-1847)は自然科学の正式な教育を受けていないにもかかわらず、プランクトンのゾエア幼生を発見したりプランクトンネット(プランクトンを濾しとって集めるための器具)を発明するなど、プランクトン研究において大きな功績を残した人物だ。

.

ところであなたはマイクロプラスチックという言葉を耳にしたことがあるだろうか。近年、この肉眼では確認できないほど微小なプラスチック粒子が環境問題として注目を集めている。

石油で出来ているプラスチックは有害物質を表面に吸着させる働きを持っており、海中を漂うプランクトンたちはそのプラスチック粒子を食料と勘違いして摂取してしまう。すると生態系の根幹を成すプランクトンの汚染は食物連鎖にも多大な影響を及ぼしてしまう。汚染されたプラスチックを食べて育ったプランクトンは海洋生物や鳥類の体内へ、そして最終的には人間にも健康被害を及ぼす可能性もあるのではないかと懸念されているのだ。

そこで写真家のバーカーは綿密なリサーチのもと、トンプソンが200年前にプランクトンを採取したコークハーバー(アイルランド南海岸)でサンプルを採取し、さらには19世紀初頭に出版された彼の本をもとに作品を制作することで、200年の間に起こった海洋の変化を表現した。

興味深いのは一見顕微鏡写真に見えるこれらの写真が実はプランクトンの写真ではなく、実際にその場所で採取されたプラスチック製の廃棄物や漂流物を、バーカーが期限切れのフィルムを使って長時間露光で制作したイメージであるという点だ。

この点において彼の作品は通常の報道系の写真集やアーカイブイメージを組み込んだ写真集とは異なっている。環境問題というとっつきにくいテーマを表現するにあたって、幻想的なイメージで読者の想像力を掻き立てながらも問題提起を行うバーカーの手引は見事であるといえよう。

造本も大変凝っており、古書のような加工がされていたりオリジナルの書物をうっすらと印刷してあったりと、非常に綿密に作り込まれている。環境問題という目ををそらしたくなるテーマだが、それでも思わず何度も手にとって開いてしまう、なんとも不思議な魅力と美しさに満ちた一冊である。

Shop “BEYOND DRIFTING: IMPERFECTLY KNOWN ANIMALS” by Mandy Barker